サウジ攻撃するフーシ派を支援するのはUAEーサウジとUAEは仲が悪い。中東の非常に複雑な力関係。(2026年10月29日公開)

先日、サウジアラビア王室内の激しい対立を書きました。
サウジの強権的で独裁的なビン・サルマン皇太子と、その弟や王室内の反対勢力とが血で血を洗う抗争を裏で行ってきました。
現在イエメンのフーシ派(正式名アンサーアッラー)がサウジを軍事的に圧倒し、サウジの国自体が崩壊の危機に瀕しています。
このフーシ派を支援しているのは王室内反サルマン勢力では、と紹介しましたが、ここにきて支援するのはUAE大統領モハメッド・ビン・ザイードであるという報道が出ました。The UAE Is Secretly Helping Ansarallah Fight Saudi Arabia in Yemen

UAEはフーシに対して、イエメン国内でのサウジに関する諜報を提供している↓

米はこのことを察知し、UAEに情報提供を中止するよう通告したが、まだ続いている。
UAEは米とイスラエルの同盟国で、フーシはイランと関係が強い。しかしUAEはイエメンに関してサウジと敵対しており、そのためフーシと組んでいる。敵の敵は味方、ということだ。
昨年12月、イエメン内のUAE派とサウジ派が軍事衝突している。将来的にUAEとフーシが同盟を組んでサウジを攻撃するかどうかは、これからのサウジの動きにかかっている。
ーーー
中東が何故複雑なのか、それは歴史的に部族対立が基本にあり、国を超えた部族同志の結束或いは対立があるからと言われます。このことを完全に理解するのは、欧米の中東専門家にとっても至難の技だそうです。
ところでサウジのMBSとUAEのMBZが何故仲が悪いのか、コーパイに聞くと、
ーーー
「仲が悪い」というより、
かつては非常に近かったが、近年はライバル関係が強まった
という表現が実態に近いです。
MBZ(Mohamed bin Zayed、UAE大統領)とMBS(Mohammed bin Salman、サウジ皇太子)は2010年代後半には「中東の新世代強権指導者」としてしばしば一括りに語られました。
しかし近年は利害の衝突が増えています。
① GCC(湾岸協力会議)の主導権争い
以前はサウジが圧倒的な大国で、UAEは比較的小さなパートナーでした。
ところが、
ドバイが金融センター
アブダビが投資拠点
UAEが物流・航空のハブ
として成功したため、湾岸地域での影響力が急拡大しました。
その結果、
「湾岸の中心はリヤド」
「いやドバイやアブダビだ」
という競争が起きています。
② 経済のライバル
MBSは「Vision 2030」で
国際企業の地域本社をリヤドへ移す
金融センターを作る
観光国家になる
ことを目指しています。
これは事実上、ドバイが得意としてきた分野を奪う戦略です。
そのためUAE側には「サウジが我々のビジネスモデルをマネしている」という不満があります。
③ 原油政策
OPEC+ではしばしば対立します。
サウジは
原油価格維持
を重視する傾向があります。
一方UAEは
生産能力を増やしたので輸出量も増やしたい
という立場です。そのため増産枠を巡って衝突することがあります。
④ イエメン問題
両国ともイエメン内戦では同じ陣営でした。
しかし、
サウジは統一イエメンを重視
UAEは南部勢力を支援
という違いがありました。結果として、戦争の目的そのものが異なっていたことが明らかになりました。
⑤ 対イスラエル政策
UAEは2020年に
アブラハム合意でイスラエルと国交正常化しました。一方サウジはより慎重でした。
現在は接近していますが、中東戦略の速度や優先順位には違いがあります。
個人的な関係は?
興味深いのは、MBSは若い頃、MBZを師匠として尊敬していたと言われることです。
しかしMBSが権力を掌握してからは、
サウジ自身が地域覇権を目指すようになり
UAEの助言を受ける立場ではなくなった
ため、「師弟関係」から「競争相手」へ変わったと見る専門家が少なくありません。
つまり現在の関係は、敵同士ではないが、友人とも言い難い。安全保障では協力しながら、経済と地域覇権では激しく競争する関係
と考えるのが最も近いでしょう。
ーーー
中東は数百年間、オスマントルコ帝国が支配してきました。第一次大戦後、帝国は崩壊し、その後の中東支配をイギリス・大英帝国末期が引き継ぎました。しかし現在のイスラエル問題など、イギリスのやり方には多くの間違いがあったのは事実です。
やがて大英帝国も崩壊し、中東はアメリカに丸投げされ、CIAだの原油利権のオイルメジャーだのが、現地の腐敗勢力と協同してやりたいことをやってきました。
イランはそれにストップをかけようとしているのです。
100年前イギリスが国境線を引いた中東は、これから数年かけて湾岸諸国も崩壊していき、
地図が大幅に描き替えられるという指摘が強いです。
ところで、ここでクイズです。1916ー18年ごろ、あるイギリス諜報官が中東で工作員として大活躍しました。誰でしょう?
答えは

第一次大戦中に中東で起きた「アラブの反乱」はオスマントルコから中東を独立させ、イギリスが原油利権を得るための工作でした。そこで縦横無尽に活躍したのがロレンスでした。
天然資源が豊富な国・地域には、必ず何らかの工作があり、欧米(近年は中国も)が儲かるようにできています。
天然資源の代わりに人的資源が豊富な日本には、愚民化工作が戦後なされてきました。それから脱却する必要があります。



コメント